アダルトチルドレンは、「生きづらさ」を感じやすいのが特徴です。
人生のいくつものシーンで感じてきた「生きづらさ」。
アダルトチルドレンは、アルコール依存症の家族のもとで育った人を指す言葉でしたが、機能不全家族のもとで育ち、生きづらさを抱えている人たちも、アダルトチルドレンと呼ばれるようになりました。

子供の頃の傷ついた思い出を、いつまでも隠し持っていると、その傷ついた子供(インナーチャイルド)が「かんしゃく」「過剰反応」「結婚問題」「依存症」「暴力的な育児」「人間関係の破壊や、苦痛な人間関係」などで人生を汚染します。
進学や就職や結婚などの人生の岐路や、家族や社会での人間関係の中で、「生きづらさ」を感じながら人生を送ることになるのです。

アダルトチルドレン

アダルトチルドレン

アダルトチルドレンとは

大人になって、「生きづらさ」を感じて、初めてアダルトチルドレンと気がつく方がほとんどです。 ではなぜ、アダルトチルドレンになってしまうのでしょうか。
アダルトチルドレンの原因は、育った環境(家族)にあります。
そして、その家族は、二つのタイプがあり、どちらの環境で育った子供もアダルトチルドレンといえるでしょう。

・アルコール依存症の親に育てられた子供(Adult Children of Alcoholics)
・機能不全家族で育った子供 (Adult Children of Dysfunctional Family)

機能不全家族とは

  • 冷たい、愛のない家族
  • 性的、肉体的、精神的虐待のある家族
  • 家族内に秘密がある家族
  • 他人や兄弟があれこれ比較される家族
  • 親の期待が大きくて、何をやっても期待に添えない家族
  • お金、仕事、学歴だけが重視される家族
  • 人目ばかりを気にする、表面だけ良い家族
  • 親が留守がち、病気がちな家族
  • 親子の関係が逆転している家族
  • 両親の仲が悪い家族
  • ケンカの絶えない家族
  • 嫁姑の仲が悪い家族
  • …etc

はた目から見れば経済的にも裕福で、両親が社会的地位のある立派な方であったとしても、子供にとって上記のどれかにあてはまるようであれば、機能不全家族である可能性は高いのです。
現在、アメリカでは約90%以上、日本でも約80%以上の家族が機能不全家族と言われています。

アルコール依存症家族や機能不全家族の4つのルール

アルコール依存症家族や機能不全家族には、暗黙のルールがあります。
「否認」アルコール依存症を本人も家族も否認します。問題を否認し、アルコール依存症者のことも否認していくうちに、自分の心の中にあがってくる感情をも否認してしまいます。
「硬直性」暴言や暴力がいつ起きるかわかりません。家族は心を閉じ、構えて生活するようになります。
「沈黙」飲酒によって起こった出来事や家族の問題を、家族以外だけでなく、家族同士でも話しません。
「孤立」飲酒によって起こった出来事や家族の問題が、周囲に知られないように、人とのかかわりを避けるようになります。また、家族同士ても孤立し合うため、親密性が育まれなくなります。

完璧主義と抑圧家族

日本の機能不全家族の代表格に、抑圧家族があげられます。
完璧主義な家族に下で育つと、いつも小さな内なる親が、自分に問いかけてきます。
「これで良いのか」「これで正しいのか」「自分は間違っていないか」「これは意味があるのか」「何か間違っていることをしていないか」そこではミスが許されません。
抑圧家族は、日本の真面目で几帳面を尊び、感情を表に出さない事を重んじてきました。大人は子供に真面目で几帳面な良い子でいることを、それとなく望んできました。
そんな抑圧家族は、多くのアダルトチルドレンを生み出しました。他人と親密な関係が持てず、孤独感や空虚感を肌で感じ、ひたすら他人からの称賛を求め、自己卑下をして生きるアダルトチルドレンを量産したのです。

過保護で過干渉な家族

最近は、社会変化の中で、アダルトチルドレンの特徴を有するのは、いわゆる機能不全家族だけではなく、愛情がありすぎる家族、過保護や過干渉な親に育った方にも、増えてきました。

「毒になる親」

「毒になる親」通称:毒親とは、「子供に害悪を及ぼす親」「子供の人生を支配し、子供に害悪を及ぼす親」を指す言葉として、使われています。
神様のような親、義務を果たさない親、コントロールばかりする親、アルコール依存の親、残酷な言葉で傷つける親、暴力を振るう親、性的な行為をする親、などが毒親にあたります。機能不全家族の親は、毒親でもあります。

※ここで「えっ!? 自分はアダルトチルドレンだということは自覚しているけど、うちは普通の家族、良い家族だったはず」という方もいらっしゃると思います。
ところが、じっくりと掘り返してみると、気づかなかっただけで意外と問題のある家族は多いのです。 また、「自分が育った場所=根底となる最初の価値観が生まれた場所」なわけですから、そこにある問題をあたりまえのことだと思い込み、問題を認識していない(気づかない)ことも多いのです。

アダルトチルドレンの特徴

・正しいと思われることに疑いをもつ
自分に基準がなく、他人の基準で物事を判断してしまう
・最初から最後まで、一つの事をやり抜くことができない
自分に基準がなく、他人の基準で物事を判断してしまう
・情け容赦なく自分を批判する
自分の悪いところばかりに目がいってしまう
・何でも楽しむことができない
自分を解放できない、冷めている
・自分の事を深刻に考え過ぎる
何でも悪い方に考えてしまう
・人との親密な関係がもてない
親密さに対する恐れがある
・自分の変化を支配できないと過剰に反応する
自分の感情をコントロールしようとする
・常に承認と賞賛を求める
自己評価が低いため、他人からの賞賛を求める
・過剰に責任を持ったり、過剰に無責任になったりする
白か黒しかない、グレーゾーンがあることを知らない
・忠誠心に価値がない事に直面しても、過剰に忠誠心をもつ
依存心が強い
・衝動的である

子供時代を子供らしく過ごすことのできなかったアダルトチルドレンは、周囲に気を使い、自分の感情を抑えて子供時代を過ごします。
そのため、大人になっても素直に自分の感情を表現することができず、自分の言いたい事を言い出しかねたり、抑えすぎて突然爆発したりします。

泣く時に泣けなかったり、ひとりぼっちで声を立てずに泣いたりします。

また、特定の感情経験に反応して、転職、結婚、離婚などの「白か黒か」の決定的な判断をしてしまいやすい。

大人を信頼できない子供時代を過ごしてきたので、他人を信頼できません。 他人を信頼できないため、援助や助けを求める事が苦手です。
同時に、甘えたくても甘えることができない子供時代を送ってきたため、依存したくでもできず、自分の心をコントロールしたがり、支配しようとします。
また、間接的に相手の心もコントロールしたがり、支配しようと一生懸命になります。
しかし相手をコントロールできないので、相手を恨んだり、信頼しなくなります。

子供時代を寂しく過ごしてきたので、大人になっても得体の知れない寂しさ襲われたり、抑うつになったり、不安になります。 結婚や恋愛をしても寂しさは拭われず、家族をもってもなお孤独です。
そして相手から見捨てられることに過剰に敏感であったり、自分が相手を見捨てることに過度に鈍感であったりします。

両親や家族の歪みに自分が関わっているのではないかと感じて子供時代を過ごすと、自責感が強く、自己評価も下がりやすいです。 自分を責めて、自己卑下してしまいます。

アダルトチルドレンのパターン

アダルトチルドレンは、家族の中で懸命にバランスをとろうと、これらの役割を果たします。

・ヒーロー、スーパーヒーロー(優等生、英雄)
「優秀な子」「しっかり者」「いい子」でいることで、評価されようとする。
親からも他の子からも頼られて信頼されるとこによって、家族のバランスを保とうとしている。
目標を達成しても「もっともっと」と期待されるため、常に不完全感や失敗感をもつ。
・スケープゴード(暴走する子、いけにえ)
家でも学校でもトラブルを起こす。攻撃的に振る舞い、存在を主張すると共に、家族の中の本来の問題から目をすらすそらす役割を果たす。
この子さえ居なければすべて丸く収まるのでは、という幻想を他の家族に抱かせることで、家庭の真の崩壊を防いでいる。
「寂しい」「助けて」が言えず、傷ついた感情を持っている。
・クラウンマスコット(道化師)
家庭に緊張が走ると、突然トンチンカンな言動をしたりして、緊張感を和らげ、問題を分散させるために注意をそらす役割。
普段から家族のペット的存在で、本人もそれを楽しんでいるように映るが、道化は単なる仮面である。
落ち着きのない行動をとり(多動児など)情緒不安を抱える。
・ロストチャイルド(忘れ去られた子供)
問題がないことで家族に貢献する。息を潜め、緊張した家族関係から身を守り自分の空間を持つ。
また、目立たないことで問題ではなく、自分に注意を向けようとする。
誰かとつながりたいが、殻を破るのが怖くて、閉鎖的、内向的に成長する。
・ケアテイカー(なだめ役、ミニカウンセラー)
混乱の中で、うまく調整役をこなす。愚痴を聞いたり、弟妹の保護者的役割になったりする。
ひたすら周囲の役にたとうとする。
「あなたはどうしたいの?」と聞かれると、頭の中が真っ白になる。
自分の感情を認知することができない。

一つの役割を演じることもあれば、複数の役割を受けもつ子供もいます。

また、「ママの王子様」「パパのお姫様」として父・母の寂しさを和らげたり、「頑張り屋」「奉仕者」とになることで、家庭の崩壊を避けようと努力したりします。

アダルトチルドレンの歴史

アダルトチルドレンのもともとの意味は「Adult Children of Alcoholics」つまり「アルコール依存症の家族の下で子供時代を送った人」からきています。以前は、アルコール依存症は、アメリカでも日本でも、病気と考えられていませんでした。意思が弱い、だらしない、とみなされ、本人が責められることはあっても、治療の対象ではありませんでした。

1955年に、アメリカでアルコール依存症が「病気」として認められ、その家族の下で育った子供が注目され、研究されるようになりました。

1970年代からは、アルコール依存症の家族ACOA(Adult Children of Alcoholics)、機能不全家族の下で育った子供ACOD(Adult Children of Dysfunctional Family)を、まとめてAC「アダルトチルドレン」と呼ばれるようになりました。

1983年に発売されたウォィティツ著「Adult Children of Alcoholics」がベストセラーになり、アダルトチルドレンという用語が定着していきました。

1995年、日本では、臨床に関わる人などにしか知られていなかった、アダルトチルドレンですが、クリントン元アメリカ大統領が、自らアダルトチルドレンであると公言したことにより、日本でも社会的関心が高まっていきました。そのクリントン元アメリカ大統領は、アルコール依存症の義父の下で育ち、義父と実母の調停役として、子供時代を過ごしたと述べています。

アダルトチルドレンの問題点

アダルトチルドレンの問題点

アダルトチルドレン(AC)は病気ではありません。
しかし、その特徴が進むと、人生をさらに汚染します。

依存症

・物質依存症
アルコール、ドラッグ、タバコ、カフェイン

・過程依存症
ある行為への依存、ギャンブル、過食症、拒食症、摂食障害、買い物、仕事、セックス

・関係依存症
人間関係への依存症、マザコン、エディプスコンプレックス(同性親に対するコンプレックス)、恋愛、共依存症

問題行動

自傷行為、自殺、虐待、 暴力、など
ストレス性障害
自律神経失調症、過呼吸、心身症、脱毛症、肩こり、ヒステリー、など

精神障害

抑うつ、神経症、不安神経症、パニック障害、強迫神経症 、など

世代連鎖

問題が心の内にある以上、世代連鎖を断ち切ることは難しいでしょう。
自分の抱えた問題が、そのまま子供に受け継がれます。そして新たなるアダルトチルドレンが生まれてしまうのです。

アダルトチルドレンからの回復

心の中にいる傷ついた小さな子供を、インナーチャイルドと呼びます。アダルトチルドレンを克服する方法の一つは、このインナーチャイルドを癒し、再生していく方法です。過去のあなたの発達段階に立ち帰って、傷ついたインナーチャイルドを癒していくのです。傷ついた場面に戻り、辛かったことや悲しかったことを嘆いていきます。
そして、今のあなたがインナーチャイルドを労り癒していきます。
インナーチャイルドが癒されたとき、あなた自身が癒され、自分らしい人生を取り戻すことができるのです。

子供時代の傷ついた感情を思い出す時、苦痛が伴うかもしれません。そのため、一人よりもカウンセリングや自助グループ、ワークショップを利用して自分の子供時代を嘆き悲しみ、そして癒すことが最も効果的で、回復も早いでしょう。
インナーチャイルドを癒し、自分らしさ、自分の人生を取り戻しましょう!

参考・引用文献
「アダルト・チルドレン癒しのワークブック 本当の自分を取りもどす16の方法」西尾和美
「アダルトチルドレンと共依存」緒方明
「毒になる親 一生苦しむ子供」スーザン・フォワード

サイト監修:公認心理士・臨床心理士 諸富祥彦